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こんな学校があったんだ!

こんな学校があったんだ! 2022-2023
監修:新しい学校の会

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プレスリリース

上申書
 構造改革特区「学校設置会社による学校設置事業」に関する行政指導について

                                                  平成24年9月4日

内閣総理大臣
野田 佳彦 様

新しい学校の会
東京都千代田区神田猿楽町2-1-14 A&Xビル6階 
T&Tビル4階
理事長 日野 公三

上申書
(構造改革特区「学校設置会社による学校設置事業」に関する行政指導について)

※別紙「株式会社立通信制高校における生徒指導・支援の状況について」を添付します。

第1 上申の趣旨
 平成24年6月29日(金)の内閣府構造改革特別区域推進本部の評価・調査委員会における、規制の特例措置816番(「学校設置会社による学校設置事業」)に関する評価意見中の、「内閣府は、内閣府通知「株式会社立通信制高校に係る特定事業に関する取扱いについて(通知)」(平成18年8月1日)を踏まえ、面接指導等(面接指導、添削指導、試験)が特区区域内で行われるよう、あらためて認定団体に対して周知・指導する。」との部分及び「新たな特区計画の申請があった場合は、その認定は、(1)面接指導等(面接指導、添削指導、試験)の特区区域内での実施(中略)について、認定申請団体に確認した上で行う。」との部分(以下、両部分を「本件意見」という。)に基づく行政指導は、構造改革特別区域法(以下「特区法」という。)に違反するものであるので、今後、かかる行政指導を行わないでいただきたい。

第2 上申の理由
 1 本件意見に基づく行政指導は、以下に述べるとおり、特区法の条文に明らかに違反している。
特区法は、「地方公共団体が当該地域の活性化を図るために自発的に設定する区域であって、当該地域の特性に応じた特定事業を実施し又はその実施を促進するもの」を「構造改革特別区域」(以下「特区」という。)と定義した上で(2条1項)、「「特定事業」とは、地方公共団体が実施し又はその実施を促進する事業のうち、別表に掲げる事業で、規制の特例措置の適用を受けるものをいう」とする(同2項)。すなわち、同法別表に掲げる特定事業については、当然のことながら、同法所定の規制の特例措置を受けることになる。

  規制の特例措置816番については、同法別表に「学校設置会社による学校設置事業」として明記され、かつ、特区法12条にその事業の特例措置についての具体的な規定がある。これらの規定から、規制の特例措置816番の「特定事業」とは、学校の「設置」であることが確認できる。

 同条1項には、「地方公共団体が、……(中略)……と認めて内閣総理大臣の認定を申請し、その認定を受けたときは」という要件の元に、学校教育法の条項についての様々な読み替え規定が存在し、これらの規定によって、特区法12条1項所定の申請及び認定があった場合の学校設置会社は、学校教育法の適用を受け、学校法人同様に、学校を「設置」することができることとされているのである。
そして、特区法は、学校設置会社として適合していなければならない要件を満たすべきこと(同2項)、業務状況書類等を備え置くべきこと(同3項)、同書類等の閲覧等の請求に応じ(同4項)、認定地方公共団体の評価(同5項、6項)や転学のあっせん等(同7項)の措置を受けるべきことなど、学校設置会社に対し種々の規制を規定している。そうであるとすれば、特区法は、学校設置会社に対する明文の規制を設けていない事項については、学校設置会社は学校法人と等しく学校教育法の適用を受け、これらを同等に扱うべきものとしていると解する外ない。
そして、本件意見にあるような、広域通信制高校の面接指導等(面接指導、添削指導、試験)を学校が設置された特区区域内で行われなければならないという規制は、特区法のどこにも、また、もとより他の法律にも、その根拠がないものである。学校教育法には、全国に在住する生徒を対象とする広域通信制高校の教育の全てを、その学校が「設置」された地方公共団体の区域内で行わなければならないと規制する規定は無い。よって、本件意見に基づく行政指導は、特区法の容認しない規制を行おうとするものであって、特区法に反し違法である。

2 本件意見に基づく行政指導は、以下に述べるとおり、特区法の目的との関係でも、違法といわなければならない。

 (1)特区法1条は、「この法律は、地方公共団体の自発性を最大限に尊重した構造改革特別区域を設定し、当該地域の特性に応じた規制の特例措置の適用を受けて地方公共団体が特定の事業を実施し又はその実施を促進することにより、教育、物流、研究開発、農業、社会福祉その他の分野における経済社会の構造改革を推進するとともに地域の活性化を図り、もって国民生活の向上及び国民経済の発展に寄与することを目的とする」と規定している。特区法は、構造改革の推進、地域の活性化、国民生活の向上及び国民経済の発展という目的の実現のために、特定事業の実施とその推進を図るべきこととしているのである。
そうであるとすれば、特定事業である学校設置事業を実施している学校設置会社に対する行政指導も、同事業の推進を図るという点を十分に考慮しなければならず、同事業の実施を著しく困難にすることとなるような行政指導は、違法となると解すべきである。

 (2)本件意見は、株式会社立通信制高等学校に関するものであるが、我が国の通信制高等学校には、地理的な対象範囲からいって、広域(=生徒が47都道府県に住所を有する)と狭域(=生徒がひとつの都道府県内及びその隣県に限って住所を有する)の2種類がある(学校教育法54条)。

 学校法人立の広域通信制高校の「設置」認可は特定のひとつの都道府県によって行われるが、その学校は47都道府県に在住する生徒をその教育の対象とする。生徒が47都道府県に在住するだけではなく、学校法人立の広域通信制高校は、学校が「設置」された都道府県以外の都道府県に協力校などの教育拠点を設け、正課の教育を行っている。場合によっては、生徒が、認可を受けた都道府県の学校(=本校と呼ばれることが多い)に一度も通うことなく卒業できる学校運営である。このことは、様々な事情を抱えた生徒に対し、その生徒が在住する場所のなるべく近くで教育を行おうとする学校側の努力姿勢によるものであり、今日において、広域通信制高校の一般的な運営スタイルとして定着している。かつ、この運営の在り方は、学校教育法及びその関連法令に抵触するものでなく、適法である。

 このように、関係法令に照らし、広域通信制高校の場合、その「設置」された地域は教育を行う地域を制限するものではない。逆に言えば、広域通信制高校は、特定の地域に「設置」されるが、その本質から言って、教育は全国を対象とするものである。「設置」された地域にのみ、その教育が限定されれば、広域通信制高校の運営は困難であり、生徒のデメリットは計り知れない。
株式会社立の通信制高等学校についても、そのほとんどが広域通信制高校であって、その設置認可は特区自治体が行う(特区法12条1項)ものの、学校法人立と同様に、生徒は47都道府県に在住し、教育の活動範囲は全国となる。

かかる株式会社立の通信制高校について、「面接指導」、「添削指導」、「試験」を特区区域内において行うべきであるという本件意見は、その本質において全国が対象となる広域通信制高校の活動を特区区域内に封じるものであって、それによる生徒の経済的、時間的負担および教育上の負担は甚大である(※)。そして、そのようなことを生徒に強いらねばならないとすれば、通信制高等学校を設置して行う学校設置会社の学校設置事業の実施が著しく困難になることは明らかである。

 ※生徒が被る具体的なデメリット(教育的な問題点)について、別紙「株式会社立通信制高校における生徒指導・支援の状況について」をご参照願います。

 (3)特区法1条の目的には、「地域の活性化」が掲げられている。そのためには、特区内において教育活動を行うことが望ましいという考え方も成り立ち得ることは認めざるを得ない。
しかし、その本質から言って全国性を有する広域通信制高等学校の教育活動に真っ向から反する規制を施して学校設置会社の学校設置事業の実施を困難なものとすれば、かかる事業を通じて実現しようとしている「地域の活性化」は、全く実現不能となってしまう。学校設置会社が行う広域通信制高校の教育のうちどの部分を学校が「設置」された特区内で行うことを要するかは、まさに、地方公共団体の「自発性を最大限に尊重」して、地方公共団体と学校設置会社との協議に任せればいい事柄というべきである。
それにもかかわらず、国の行政機関である内閣府が、本件意見に基づく行政指導を行い、特区における学校設置事業を著しく困難な状況に追い込むとすれば、それは、「地方公共団体の自発性を最大限に尊重した構造改革特別区域を設定」することによって、「地域の活性化」を図ろうとする、特区法1条の目的に、真っ向から反することになるといわなければならない。

 (4)よって、本件意見に基づく行政指導は、特区法の目的との関係でも、違法である。

3 以上のとおり、本件意見に基づく行政指導が、特区法に違反するものであることは明らかであるので、今後、かかる行政指導を行わないでいただきたく、上申するしだいである。

                                                          以上
 

 
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