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金子道仁参議院議員「通信制こそ改革の先頭に」 新しい学校の会シンポジウム
2026年03月19日

新しい学校の会(略称:新学会、理事長:大森伸一)が3月18日、令和7年度教育シンポジウムを東京都内で開催した。参議院議員の金子道仁議員が基調講演を行ったほか、通信制高校在校生、卒業生を交えたパネルディスカッションも実施。また今年で5回目となる「通信制高校卒業生アンケート調査」の最新結果報告では通信制高校卒業生の2年後、7年後の実態も浮き彫りになった。

▲挨拶をした新しい学校の会・大森伸一理事長(学校法人鹿島学園理事長)
卒業後の進路は初めて「大学進学」がトップに
背景に年内入試や通信制大学の急増
新学会は2021年度より、約4000人規模の卒業生アンケート調査を継続的に実施。調査では卒業2年後、7年後のそれぞれの状況を追っている。背景に通信制高校卒業生の「卒業時進路未定率の高さ」、「大学、専門学校進学者の退学率の高さ」、「進路未定者、退学者のその後の“何もしていない”率の高さ」への懸念を挙げており、同会は3年計画においてアンケート調査の継続、卒業後を見越した在学中進路指導の研究、有効な卒業生支援機関の開拓・連携などを進めている。
通信制高校の卒業後進路状況については、最新の学校基本調査で初めて大学等進学者がトップとなり進路未定者を上回った。背景には総合型選抜や学校推薦型選抜などの入試形態の多様化や年内入試の増加、また通信制大学への進学者急増の影響があると同会は捉えている。調査報告を行った事務局長で学びリンク代表取締役社長の山口教雄は「今後、大学等進学者は全日制と同じ6割にまで増加するだろう」と分析する。
通信制大学については、通信制高校からの進学者が最新調査で15.1%を占め、この5年で約3倍になった。全日制高校からの進学者が約0.1%に留まることから圧倒的なニーズの高さがうかがえる。通信教育研究会が行った調査によると、通信制大学への入学動機は「通学する必要がない」(62.9%)、「都合の良い時間に学べる」(57.8%)、「健康上の理由で通学が難しい」(34.8%)などが挙げられていることから、山口は「通信制高校の入学動機と重複する」とその傾向を指摘。「通信制高校を卒業したから」(20.5%)というストレートな理由もあった。通信制高校を運営する法人が通信制大学を立ち上げる事例も出てきており、「これからどういったかたちでフォローアップしていくかが課題」と今後の見方も示された。

▲調査報告を行った事務局長の山口教雄(学びリンク株式会社代表取締役社長)
進路未定者の45%が2年後「何もしていない」
通信制の多様な進路実績を明らかにする必要性
卒業生アンケート調査では、過去の調査でも指摘されていた「何もしていない」状況にある卒業生たちの実態が改めて浮き彫りになった。報告によると、23年度に会員校を卒業した2,652名のうち、大学進学者は35.9%、専門学校進学者は30.2%、就職者は16.3%。これら卒業生の2年間の経過を追ったところ、大学進学者の4.2%、専門学校進学者の8.7%、就職者の23.2%がそれぞれ退学あるいは退職をしていた。さらに、退学・退職した人の2年後の現在を追ったところ、「何もしていない」とした人が大学退学者で30.0%、専門学校退学者で11.4%、就職者で21.0%いた。
一方、卒業時進路未定者は14.0%。このうち2年間の途中経過で「何もしていない」とした人は38.7%で、うち45.1%が2年後の現在も同様の状況にあった。これらは7年後の状況(18年度卒業生)でも同様の傾向が見られる。進路未定者においては、卒業時進路未定19.1%のうち27.6%が7年間の途中経過で「何もしていない」状況にあり、このうち7年後の現在も同様の状況にある人が61.8%いた。
これらの結果を受け、山口は「定量調査による実態把握の必要性」を訴えたほか、通信制高校卒業生の誰もが「何もしていない」状態になり得ること、「進路未定」はまとなたい経験機会喪失の場合があることを指摘。さらに、通信制高校に対しては「在学中の進路指導に卒業後を見越した進路指導を加味することが有効である」として報告をまとめた。一方で、公的調査では就労移行支援などの福祉ルートや特定分野のプロを目指す養成所への入所などは「その他」(いわゆる進路未定)に区分されることから、山口は「通信制ならではの多様な進路実績を明らかにし、社会にアピールしていかなければいけない」と訴えた。
地方創生の可能性を持つ通信制高校
「誰一人取り残さない教育とは」

▲基調講演を行った金子道仁参議院議員
第二部では、参議院議員の金子道仁議員が「高校授業料無償化から教育無償化への道程」と題して基調講演を行った。金子議員は参議院文教科学委員会理事で所属する日本維新の会文部科学部会長を務めるほか、通信制高校・相生学院高校猪名川校の校長といった経歴を持つ。
金子議員は24年6月に「教育無償化等の推進に関する2法案」を提出。25年2月に自民、公明、維新の三党合意に到達した。就学支援金拡充においては、一時、通信制高校を対象外とする意見が出たものの、議員は、課程に関わらず一律上限額45.7万円にすべきと主張。結果的に通信制高校の就学支援金上限額は29.7万円から33.7万円へと引き上げられた。
講演では、現在、国で協議が進められている「高校教育改革グランドデザイン2040」について、日本維新の会が独自に提示した骨子案についても触れられた。金子議員は、グラウンドの特徴について、「生徒の『好き』を育み、『得意』を伸ばし、生徒一人ひとりの可能性を拡げ能力を伸ばすこと」、「生徒の主体性を育み、生徒自らの人生を切り拓いていく『生徒を主語にした』教育を進めること」の2点を強調。「全日制も今、改革を進めていますが、柔軟性の高い通信制こそ、この改革の先頭に立つことができる」と期待を込めた。
また、地方における教育格差についても触れ、若者の自殺率の高い地域の特徴に学校や居場所の選択肢の少なさが指摘されていることを挙げながら、「『この高校を辞めたら生きていけない』と追いつめられる生徒たちに対し、違う選択肢、違う未来を見せられるのが通信制のはず」と力説した。さらに、グランドデザインでは、通信制教育の良さを広めるためにも、通信制における「優良事例」を社会へアピールすることの重要性を説いた。

講演では、質疑応答の時間も設けられ、企業が地域の教育に関わるうえでの役割について聞かれた金子議員は、経済的サポートと技術的支援を挙げたうえで「『教育のコストは学校、果実は企業』と分けられている今の体制から脱する必要がある」と指摘。また、オンラインでの教育を念頭においた都道府県の枠組みを超える連携の必要性を指摘する質問では、「今まで、高校での教育について、文科省には全国を見るという姿勢が足りなかった」と指摘。「現在は各都道府県単位の議論になっているが、今後は広域でのオンライン教育についての議論も必ず出てくると思う」と述べた。
在校生・卒業生が本音吐露
それぞれの通信制高校、未来について

第三部では、通信制高校の在校生・卒業生によるパネルディスカッションが行われ、自身の学校生活や通信制高校の今後の未来に対する思いを語った。
通信制高校のメリットについて話した松陰高校浦安校の寺井司さんは「通う日数が少なくても自宅にいながら自分のペースでレポートを進められた」と自分に合った学習が実現できたことを話した。入学式で在校生代表の挨拶を務めた、さくら国際高校の佐野綾希さんは「何を頑張れば良いか分からなかったとき、先生がアドバイスやサポートをしてくれました。成功したときに見逃さずにほめてくれたことも嬉しかった」と教員の温かな支援について振り返る。在学中にSDGsに関する学生団体を立ち上げた第一学院高校卒業生の新井花音さんは、「先生との対話を通して様々な選択肢を知り、自分の興味が明確になっていった」と可能性を広げてくれた母校について語った。
ディスカッションでは、通信制高校を経験した立場から、それぞれ母校への要望や後輩たちへのエールなども語られた。外国にルーツのある子どもへの学習支援ボランティアを行う鹿島山北高校卒業生の渡邉胡桃さんは、支援する子どもたちが日本語で学習することによるハードルから、学力や自己肯定感の育成に課題が生じやすいと感じたという。そうした経験から通信制高校に対して「外国から来た生徒たちにとっても開かれた場所になれば」と期待を示した。日々輝学園高校をこの春に卒業する小川原花里菜さんは、「進路について考える際に日記を読み返したことが役に立ちました。高校生活での出会いや経験を一つひとつ大切にして、振り返りながら進んでほしい」と後輩にアドバイスを送った。
また、パネリストそれぞれの今後の目標についても語られた。在学中に日本太鼓ジュニアコンクール全国大会で優勝を果たし、現在、アーティスト活動やイベントプロモーター、太鼓教室の運営を行う明蓬館高校卒業生の植田晃太郎さんは「高校の部活で外部講師も務めているが、身近に活動できる場所がなく、卒業後に太鼓を断念してしまうことがあります。太鼓教室の規模を拡大し、より多くの人が和太鼓に触れられるようにしていきたい」と目標を語った。

この日は会員関係者のほか一般の聴講者も含め、会場には約100名が集まったほか、オンライン配信もされ、多くが通信制高校の実態や今後の展望などについて聞くことになった。会場ではシンポジウム後に交流会も開かれ、各々が情報交換を図った。
新しい学校の会は、2003年施行の構造改革特別区域法により開校した株式会社立の学校が集い「学校設置会社連盟」の名称で2005年に発足。その後、一部会員校による学校法人への設置者変更などを受け2011年に団体名を現在の「新しい学校の会」へと改称した。以降は学校設置会社、学校法人、また学校設置を構想・計画する法人個人が集まり、次世代を担う人材育成、学校教育、学校経営の在り方を探求し実践する活動を続けている。今年度創立20周年を迎え、昨年10月には国会議員や教育関係者などを集めた記念式典も行われた。現在、正会員は17の通信制高校と専門職大学院。

(取材・文/学びリンク 小林建太・小野ひなた・柳史・中曽根茜)
●新しい学校の会(新学会)HP